人生は複雑だ。だからこそ、持ち物はシンプルであるべきだ。
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JOURNAL
Life is complex.
Everyday carry should be simple.No excess. Just essentials.
人生は複雑だ。だからこそ、日常の持ち物はシンプルであるべきだ。
余計なものは一切なし。本当に必要なものだけを。
Mech Walletを開発した、PunCubeのクリエイターが掲げている言葉です。
頭の中は、いつもノイズで満ちている
「人生は複雑だ」。もっとも、人生が複雑なのは、いまに始まったことではありません。いつの時代も、生きることは十分に複雑でした。ただ、いまの複雑さには、はっきり測れる部分があります。頭に流れ込んでくる情報の量です。
総務省の最新調査(令和7年度)によれば、日本人が平日にインターネットを使う時間は、全年代の平均で183.9分。1日およそ3時間、私たちは画面越しに情報を浴びています。世界で生み出されるデータの総量は、2025年に約180ゼタバイトに達するという予測もあります(米調査会社IDC)。1ゼタバイトは、およそ1兆ギガバイト。もはや実感できる単位ではありません。
スマートフォンを開けば、次の情報が、もう届いている。頭の中は、いつも何かの処理に追われています。
同じ服を着る人たち
この複雑さに、持ち物を減らすことで向き合った人たちがいます。
有名なのは、スティーブ・ジョブズ。人前に立つときは決まって、イッセイ ミヤケの黒いタートルネックにジーンズでした。毎日、同じ服。選ばないことを、選んでいたわけです。
理由をはっきり口にした人もいます。オバマ元大統領は在任中のインタビューで、スーツをグレーと紺に限定していると明かし、こう説明しました。決めるべきことが多すぎるから、何を食べるか、何を着るかという判断は、生活から削っておきたいのだと。Facebookを創業したマーク・ザッカーバーグがグレーのTシャツばかり着る理由も、ほぼ同じです。本当に大事なこと以外の判断を、できるだけ減らしたい。
判断力が消耗することを示した、よく知られた研究もあります。裁判官による1,112件の仮釈放判断を分析したところ、休憩の直後には約65%あった許可率が、判断を重ねるにつれてほぼ0%まで下がり、休憩を挟むとまた戻った——という報告です(米科学アカデミー紀要、2011年)。「決断疲れ」という言葉で知られるようになった現象です。
頭は、使えば減る。だから彼らは、勝負どころに頭を残すために、日常の小さな判断を削りました。
その発想を、ポケットの中へ
同じ発想を、毎日持ち歩く道具に向けると、冒頭の言葉になります。世界の複雑さは変えられない。だからこそ、身の回りのものだけは、シンプルにしておく。PunCubeのクリエイターは、その考えからMech Walletをつくりました。シンプルで、ノイズがない。正直に言えば、この潔さに感銘を受けました。
財布ひとつとっても、そうです。少し前までは、長財布にカードやお札、ポイントカードをぱんぱんに詰めて持ち歩くのが当たり前でした。それが少しずつ小さくなり、いまは小さな財布を選ぶ人が増えています。
Mech Walletが提案するのは、持ち歩くカードを最低限まで絞り、紙幣はマネークリップに少しだけ、というスタイル。いまの時代に、まっすぐ合ったかたちだと思います。
そしてこの思想は、実物を手に取ると、もっとはっきりわかります。
まず気づくこと。ボタンがない。留め具がない。どこから開けるのかさえ、わからない。
Mech Wallet(Wasteland)
押すのでも、開くのでもなく
答えは、拍子抜けするほど短い。カードを取り出す動作は、ただ、スライドさせるだけ。
シンプルに見せるほうが、つくるのは難しくなります。可動部が正確に噛み合っていなければ、スムーズに動かない。0.02mm単位の精密加工が要るのは、そのためです。
余計なものは一切なし。それは、必要なものまで削ることではありません。冒頭の言葉は、この小さな道具に、そのまま形になっています。
出典:
・総務省「令和7年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」
・IDC「Global DataSphere Forecast」(世界で生成されるデータ総量の予測)
・Danziger, Levav & Avnaim-Pesso, “Extraneous factors in judicial decisions”, PNAS (2011)
本記事はMONOEDGE編集部が執筆しています。